『優しい音楽』瀬尾まいこ
- 作者: 瀬尾まいこ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/04/10
- メディア: 文庫
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表題作は、登場人物の単純すぎる思考は気になったものの、好感が持てる話。
家族のあたたかさに、いい感じに包み込まれる。
でもそれよりもよかったのは、2話めの「タイムラグ」。
またしても、不倫相手に自分の娘を預けるという単純思考に
「そりゃないだろ」と思ったけど、それをのぞけば、物語は気持ちよかった。
不倫を描いても、じっとりしていない。
男のカードを使って豪遊させようと思ってもさせられない、
それが瀬尾さんだなぁと思った。くらべるのもナンだけど、
桐野夏生だったら、男が大変凄惨な目に遭うに違いない。
『流星の絆』東野圭吾
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/03/05
- メディア: 単行本
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それ以外の部分で面白く読めました。登場人物たちのジレンマがいい。
葛藤する心情が、読み手にすごく伝わってくるのね。
せっかく兄弟と妹の血がつながってないのに、
その間に恋愛感情的なものがあっても、もっとふくらんだ気がしますが。
でも、それをやっちゃうと、複雑になりすぎるのかな。
『ニート』絲山秋子
- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/06/25
- メディア: 文庫
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ニートがテーマである限り、どんな話を書かれても
わたしは楽しめないだろうと思った。だって絲山さんの話づくりは
面白いのに、これ、キライなんだもの。
ニートを庇護してやる気持ちが、まったくわからない。
だから無理。ましてセックスなんて。
ルームシェアしてた子が出て行ったのは爽快。そうだよ、あなたに共感する。
『RURIKO』林真理子
- 作者: 林真理子
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/05/30
- メディア: 単行本
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父のエピソードから始まる、冒頭がとてもよかった。
「満州生まれ」とは、どういう生まれなのだろうと思っていた。
知識にイメージが追いついていなかった。ルリ子も満州生まれだという。
昭和の芸能界の様子も、なかなか面白かった。
ただ、男女の描き方はもう少し重たいものが読みたかった。
気になったのは、石坂浩二がこれをどう読むのかってことかしら。
なんかゴシップ好きみたいだけれども。
『箸の上げ下ろし』酒井順子
- 作者: 酒井順子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/08/28
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うまいこというなあ、といつも感心してしまう酒井さんのエッセイなのに、
なんだかコレはフツーすぎて、最後は飽き気味に。
初出が「きょうの料理」だったから、媒体のせい?
『吉原手引草』松井今朝子
- 作者: 松井今朝子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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直木賞受賞作なのに、なんでこんなに
ずっとアマゾン品切れてるんでしょ!
しびれをきらして、古書店で買っちゃいました。
*
吉原のことって、ぼんやりとしか知らなかったのですが、
これを読んで、ほうほうとわかったような気になってしまいました。
まさに「手引草」。
吉原のしきたりが具体的に説明されるので、
まったく知らない読み手でも、すーっと入っていける。
吉原のあれやこれやを知るだけでも、じゅうぶん面白いです。
松井今朝子さんの作品を初めてだったのですが、
文章の巧い人という印象。読み手の目線で書ける人。
*
主人公は花魁の頂点を極め、忽然と姿を消した「葛城」。
その姿は周囲の人々に語られることで、次第にくっくりと
輪郭を帯びてくるという手法をとっています。
要所要所で、彼女の「ありんす」口調の名言が引用されるのですが、
唯一、そこが生身の花魁を感じるところ。絶妙に効いています。
*
以下ネタバレ。
誰もが葛城のことは絶賛していて、平様もそうだったのが、
後半になって、周囲をとりまく人物像がちょっと変わってくるのが面白い。
平様の魅力が褪せてくる感じとか、
実はそんなにデキた男ではないという生々しさは、
物語の展開としてはがっかりしつつも、魅力がある。
欲を言えば、もっともっと葛城に近づいてみたかったかも。
けっこうベールに包まれて、読者の想像力にゆだねた部分が多かったので。
*
次は『さくらん』、いかなくちゃ。
漫画もDVDも。
『東京島』桐野夏生東京島作者: 桐野夏生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/05メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 132回この商品を含むブログ (168件) を見る
ひさしぶりの読書日記。
いそがしすぎて、仕事の資料以外、読めない日々が続いてますが、
この人のはどうしても読みたい。ついつい追いかけてしまう作家さん。
*
『東京島』。前評判を聞くだけで、
数年前にやっていた『サバイバー』を思い出した人は多いはず。
限られた物資、条件の中で、どろどろにもつれあっていく人間関係。
でも、あれはテレビだったから、帰れる場所があったわけで、
だから安心して視聴者も見られたし、まあゲームみたいなものだった。
でも、『東京島』の無人島漂流のリアルさといったら。
忙しいというのに、ついつい目が離せなくて、合間合間に読んで
3日で読み終わったほど。
*
桐野夏生の性悪説っぷりには、いつも目を覆いたくなるけれど、
ほんとうに巧いので、その技を見たくて読んでしまう。
この話も、読後感は最悪なんだけど、でも、
すごいなあと思ってしまう。
体に悪いと知りつつも、タバコはやめられません、みたいな感じかな。
なんなんだろうなー。
* * * *
以下ネタバレ。
登場人物は、ほんとに理解できない人間ばっかりで、
はっきり言って、読んでいる間ずーっとむかっ腹が立ちっぱなし。
キヨコの自己中っぷりはすごい。
GMが記憶喪失を装っていたというのも、ばかばかしい。
ワタナベ、気持ち悪い。というか、ホンコン含めた男衆はみんな気味が悪い。
唯一、常識の象徴であったキヨコの夫・隆が冒頭で死んでしまったことで、
さらに男たちの最低っぷりが際立っていく。
それらすべては、「無人島」という極限状態という
エクスキューズを得ているから、なんとか読んでいけるのかも。
この作品は、そういう舞台装置を使って、
書いてみたかったという実験的なものにも思えた。
*
それにしても、無人島にもし漂着したら。
ああいった事態は、ほんとうに起こりうるものなのか。
そのへん、きっと取材しているんだろうと思うので、
その裏話も気になった。