『東京島』桐野夏生東京島作者: 桐野夏生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/05メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 132回この商品を含むブログ (168件) を見る

ひさしぶりの読書日記。
いそがしすぎて、仕事の資料以外、読めない日々が続いてますが、
この人のはどうしても読みたい。ついつい追いかけてしまう作家さん。
*
東京島』。前評判を聞くだけで、
数年前にやっていた『サバイバー』を思い出した人は多いはず。
限られた物資、条件の中で、どろどろにもつれあっていく人間関係。
でも、あれはテレビだったから、帰れる場所があったわけで、
だから安心して視聴者も見られたし、まあゲームみたいなものだった。
でも、『東京島』の無人島漂流のリアルさといったら。
忙しいというのに、ついつい目が離せなくて、合間合間に読んで
3日で読み終わったほど。
*
桐野夏生性悪説っぷりには、いつも目を覆いたくなるけれど、
ほんとうに巧いので、その技を見たくて読んでしまう。
この話も、読後感は最悪なんだけど、でも、
すごいなあと思ってしまう。
体に悪いと知りつつも、タバコはやめられません、みたいな感じかな。
なんなんだろうなー。
* * * *
以下ネタバレ。
登場人物は、ほんとに理解できない人間ばっかりで、
はっきり言って、読んでいる間ずーっとむかっ腹が立ちっぱなし。
キヨコの自己中っぷりはすごい。
GMが記憶喪失を装っていたというのも、ばかばかしい。
ワタナベ、気持ち悪い。というか、ホンコン含めた男衆はみんな気味が悪い。
唯一、常識の象徴であったキヨコの夫・隆が冒頭で死んでしまったことで、
さらに男たちの最低っぷりが際立っていく。
それらすべては、「無人島」という極限状態という
エクスキューズを得ているから、なんとか読んでいけるのかも。
この作品は、そういう舞台装置を使って、
書いてみたかったという実験的なものにも思えた。
*
それにしても、無人島にもし漂着したら。
ああいった事態は、ほんとうに起こりうるものなのか。
そのへん、きっと取材しているんだろうと思うので、
その裏話も気になった。