『吉原手引草』松井今朝子

吉原手引草

吉原手引草

夏休み中の読書。
直木賞受賞作なのに、なんでこんなに
ずっとアマゾン品切れてるんでしょ!
しびれをきらして、古書店で買っちゃいました。
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吉原のことって、ぼんやりとしか知らなかったのですが、
これを読んで、ほうほうとわかったような気になってしまいました。
まさに「手引草」。
吉原のしきたりが具体的に説明されるので、
まったく知らない読み手でも、すーっと入っていける。
吉原のあれやこれやを知るだけでも、じゅうぶん面白いです。
松井今朝子さんの作品を初めてだったのですが、
文章の巧い人という印象。読み手の目線で書ける人。
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主人公は花魁の頂点を極め、忽然と姿を消した「葛城」。
その姿は周囲の人々に語られることで、次第にくっくりと
輪郭を帯びてくるという手法をとっています。
要所要所で、彼女の「ありんす」口調の名言が引用されるのですが、
唯一、そこが生身の花魁を感じるところ。絶妙に効いています。
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以下ネタバレ。
誰もが葛城のことは絶賛していて、平様もそうだったのが、
後半になって、周囲をとりまく人物像がちょっと変わってくるのが面白い。
平様の魅力が褪せてくる感じとか、
実はそんなにデキた男ではないという生々しさは、
物語の展開としてはがっかりしつつも、魅力がある。
欲を言えば、もっともっと葛城に近づいてみたかったかも。
けっこうベールに包まれて、読者の想像力にゆだねた部分が多かったので。
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次は『さくらん』、いかなくちゃ。
漫画もDVDも。