『私の男』桜庭一樹

私の男

私の男

 私の男、それは養父であり、もしかしたら本当の父親かもしれない男。そんな設定。しらけてしまって読めないか、それともぴたっとハマッてしまうか、どちらかだろうなと思いながらの、初桜庭一樹直木賞受賞作。結論としては、アタリだったけれど、作家の思い入れと精一杯感がどうも強く感じられて、★4つと相成りました。
 花と淳吾。永遠に寄り添って生きることもできたのだろうけれど、花が自立しようとするところが、この話をリアルにふくらませているように思った。ふたりだけの価値観から飛び出して、ある程度の社会性を身につけたら、こうなるんだろうな。小町さんの若い時代とその後の凋落、お坊ちゃん美郎の処世術は、ビターチョコレートにきかせたスパイスのようでもあり……。
 ところで、直木賞をとるまでは、この人は男性だと思ってました。いや、私だけじゃないよね!

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追記。
情熱大陸」を見て、やっぱり頭のピンに違和感。
小説はあくまでも小説であって、実体験を元にしているわけではないだろうけれど、でも作家とまったく別物ではないはず。どうもそのあたりは、はぐらかされたような…。読書量のものすごさにはびっくり。直木賞受賞で、彼女の頭をポンポンとなでるように叩いた北方謙三が印象に残った。あんなことされたら、泣いちゃう(感情移入しすぎ)。