『しゃべれどもしゃべれども』佐藤多佳子

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

 親しい友人の間で、私が子どもの頃に落語のクラブに入っていたのは有名な話だったりする。登場人物のひとり、村林という小学五年生が落語をおもしろいと思う気持ちが、すんなりと響いてきた。クラスでうまくかないことも、母親とけんかしてしまうことも。そんな彼が、最後の『まんじゅうこわい東西対決』で見せた、心の中のがっつりピースサイン(たぶん)に、おもわずグッときて泣けた。
 人生がうまくいかないと思っている人たち。三つ葉、十河、良、湯河原……それぞれがみんな、最後にもやもやしていたものを消化していく話の流れが気持ちがいい。あぁ、この話好きだなー好きだなーと思いながら、読めた。人物の書き分けがしっかりしていて、魅力的。『黄色い目の魚』よりもずっと無駄がなくて、文章がすっきりしていたのが好み。
 映画はまだ未チェックだけど、三つ葉は太一くんより、長瀬のイメージだなあ。兄貴っぽさが足りない感じ。